ヤング@ハート公演

米国はマサチューセッツ州ノーサンプトンで1982年に生まれた、高齢者による合唱団「ヤング@ハート」の初来日公演である。今回のメンバーは25人、平均年齢79歳。2007年に制作された、彼らの活動を記録した映画「YOUNG@HEART」を見ていたので、そのパワーは分かっていたが、やはりナマの公演は違う。客席が最初からノリノリで、声援に拍手喝采。日本のロック合唱の時には、総立ちで観客も一緒に手拍子合唱と、大いに盛り上がる。前半10曲、後半メドレーなども入れて18曲と、休憩を20分入れつつ、一気に歌う。

メンバーには、プロやアマチュアの経験者もいるが、80歳になって初めて舞台に立つ者もいるそうだ。杖の助けが必要だったり、途中で椅子に座ったりする人もいたが、音程は確かで、声量もなかなのもの。特にソロをやった人たちは素晴らしい。高音部も見事に歌い、客席を沸かせる。また、踊りやゼスチャーも、ゆったりしているのはご愛嬌として、なかなか堂に入っており、ずいぶんと見せてくれた。日本の曲は、「上を向いて歩こう」、「リンダリンダ」、「雨上がりの夜空に」の3曲であるが、20以上もの曲の英語の歌詞を覚えるだけでも大変であろうに、楽譜などの助けなしで、日本語で歌いきったのは、すごいの一言だ。

映画を見たときも、今日の公演でも感じたことだが、どうしてこんなに感激するのか、自分でも不思議である。技術的にも結構高い水準であるが、これくらいのレベルで歌うコーラスグループなら、他にもたくさんあるはずだ。平均年齢80歳の高齢者が、身体の不自由さや、記憶力の減退にも負けず、生き生きと歌い踊っている姿に感動するというのは、一つの事実ではあるが、それだけではこれほど感激したりはしない。「お年寄りのけなげな努力」ではなく、彼らの歌とパフォーマンスそのものに、感動させる不思議な力があるのだ。若々しい心の生き生きとした動きが、歌となって私たちの魂を揺さぶるのだろうか。何度でも聞きたい公演である。

なお、高齢者の集団ということもあり、メンバーはかなり入れ替わっている。映画では、「イエス・ウィ・キャン・キャン」で相当苦労していたドーラ・モローさん(87歳)は健在であったが、コールドプレイの「フィクスユー」をしみじみと歌って泣かせてくれた、渋い声のフレッド・ニトルさん(当時80歳)は、その後なくなられたそうだ。