中年クライシス 2

彼は今までのやり方が通用しないことに苛立っているようです。新しい職場で、環境が変わったことが大きいでしょう。しかし、仮にそうでなかったとしても、いずれそうなっていたのではないか。

若いうちは、ある程度自分の思う通りやれた。上司と意見の相違はあっても、自分の価値観まで変える必要性は、感じなかったでしょう。上司から命じられた仕事は、気が進まなくともやらなければならないと思ってやってきた。同僚で、仕事のできないものがいても、指導する立場にはないし、働きの無いものはいずれ報いが来るはずだった。
しかし、管理職となってしまうと、今度は、部下を動かして仕事をさせなければならない。自分と価値観の違う人間が相手です。自分が当然やるべきことと思っていることを、部下は全く理解しなかったりする。なぜそんなことをやらなければならないかと思っているようだ。そうなったら、自分の価値観を修正するか、相手が馬鹿だと思うかどちらかしかない。自分の価値観については、間違っているなどとは思えないわけです。であるからには、B社の人間に問題あり、という安易な方向に進んだということなのでしょう。

しかし、彼の場合は、部下を無能と頭から馬鹿にして、なんら痛痒を感じないでいられるほど傲慢な人間ではない。恐らく無意識のうちでは、自分の価値観と現実との葛藤を感じているはずです。彼の苛立ちは、その現れではないでしょうか。随分と後輩に対して厳しい言い方のようですが、これは、自分が経験したことなのです。