自殺を考えてみる

先週金曜の朝、駅に行ってみると、駅前は大混雑でした。どうやら人身事故のため、電車が運転をやめているようです。家を出る前に見たニュースでは、東西線の人身事故を伝えていたのですが、自分の乗る路線でも同時に起きるとは、思ってもいませんでした。このところ、鉄道の人身事故にずいぶんと頻繁に遭遇しているように思えます。いつだったか、1日に3つの路線で起きたこともありました。事故とはいっても、恐らくそのほとんどが飛び込み自殺ではないでしょうか。不況による倒産、失業といったことを苦にしての自殺が増えているとしたら、由々しきことです。そう思って、インターネットを検索してみると、厚生労働省が発行している自殺対策白書*1が眼に入りました。

中を見ていくと、意外な事実が分かります。まず、飛び込み自殺というのは、全体の2%程度と非常に小さい割合です*2。通勤路線で起きると影響が何万人にも及び、ニュースで大きく報道されるので、目立ってしまうということなのでしょう。

自殺者の総数を見ると、年間2万〜2万5千人の間であったものが、1998年に前年から一挙に8千人も増え、3万3千人になってしまい、そのまま3万2千〜4千人の状態が続いています。橋本政権下の消費税引き上げなどで、GDPがマイナス成長となったのが1998年ですから、景気の悪化が大きな要因かも知れません*3

意外な事実といえば、男女の差が圧倒的だということです。2008年で、男性約2万2千人に対し、女性は9千人程度と半分以下です。しかも、男性が1998年に7千人も増えたというのに、女性は約9百人の増加にとどまっています。一家を経済的に支えているのは男性というケースが多いので、不況による心理的圧迫を受けやすいということも考えられます。しかし、一家を支える男性を自殺により失った家族を支えなければならないのは、残された妻でしょう。母子家庭となれば、経済的な困難は一層ひどくなるはず。にもかかわらず、女性の自殺数は、それほど顕著な増加を見せていません。

さらに、男性が多いという傾向は、日本だけではありません。国際比較統計も載っていますが、それを見ると、自殺率(10万人あたりの自殺者数)は、男性で最多が68.1(リトアニア)、日本は10番目で34.8です。女性は最多が14.8(中国)で、男性の5分の一程度です*4。男とは、かくももろい生き物なのでしょうか。

*1:http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/index-w.html

*2:一番多いのが首吊り自殺で60%程度

*3:動機の統計も白書にありますが、2008年のものだけです。

*4:ちなみにリトアニア人女性の自殺率は、12.9