自分の眼で見る

先週土曜、一風変わった美術展に行って来た。千駄ヶ谷の佐藤美術館の、山本冬彦コレクション展である。たまたま日経ネットで見つけて面白そうだと出かけたのだが、佐藤美術館も山本冬彦も始めて耳にする名前である*1。山本氏は、美術とは一切関係のない会社のサラリーマンを続けながら、個人的に収集してきた美術品が1300点にも登るという驚くべきコレクターである。サラリーマン生活30年の間、毎週のように画廊を回り、「その時々の若手作家やまだ評価の定まっていない作家の作品を個人コレクターとしての自分の眼と判断で蒐集してきた」という。

今回の展覧会は、その中から161点を選んで展示したものである。特徴は、多彩なジャンルであるということ。日本画、洋画、抽象画、彫刻もあれば屏風絵もある。作家の年代も、20歳代から70歳代と幅広いという。もう一つの特徴は、作家の名前のみが表示されているだけで、その作家の年齢や出身、経歴、受賞歴など一切分からない点である。見る者が自分自身で判断せよ、ということだ。鑑賞するということは、そもそもそういうことだろう。自分がどう感ずるかなのである。受賞歴があろうがなかろうが、号いくらで売り買いされていようがいまいが、そんなことはどうでもいい。独りよがりとなる恐れはもちろんある。自分の美的センスに問題があるかも知れない。しかし、最後に頼れるものは、自分自身の感覚しかないのだ。そういった覚悟が何より大切だ。(づづく)

*1:私は寡聞にして知らなかったが、氏は、多くの本も出版している、結構有名人なのだそうだ。http://d.hatena.ne.jp/k-hisatune/20100129