酒の上の話(承前)

彼は、「B社の連中は」、という自分自身がB社なのだということを、どうしても受け入れられないのではないか。受け入れたら、自分も「あの連中」と同じだと認めなければならなくなってしまう。

私は、かなり酷なことを言っているかも知れません。彼は、社風をなんとか変えようと、努力していると言っていました。毎日遅くまで残業して、自分以外誰もやらない、下から上がってくる書類をチェックするという「雪かき」仕事をやっている。その熱意は、十分認めます。それでもなお、精神的には、安易な道を歩んでいるように思えます。「できないB社出身者」に苦しめられる「できるA社出身者」というチープな「物語」を選んでしまっている。
B社出身者が皆「できない」などということはありえません。同じ業界とはいえ、仕事の内容にかなりの差があり、詳細を知らないと、無分別なことをやっているなどと思ってしまうこともあるでしょう。そういったことを子細に考えることもなく、単に出身の違いだけで、判断してしまう。話がいささかオーバーですが、人種差別だってこれと構造は同じです。肌の色、習慣が違えば、劣等民族であるというチープな「物語」に依存して判断を放棄してしまう。

もちろん、ここまで考えた上で、怒鳴ったなどということはありません。そんな余裕があれば、冷静に話せたはず。なんだか、どうも話しぶりが気に入らない、と身体が無意識に反応したのでしょう。かみさんに話したら、いい歳したオヤジが、酒に酔って怒鳴りあうなんてみっともないから、やめなさい、と一蹴されましたが。
しかし、問題の根は、他にもあるのではないかという気もするのです。