宗教を比較してみる(2)

正月の三が日に、毎年延べ9千万人(!)の人が初詣にでかけるのだそうです。イスラム教徒のメッカ巡礼でもせいぜい100万人程度ですから、いかにもすごい人数です。釈氏が学生を連れて初詣のフィールド調査をやって、参拝に来た人に、信じる宗教はなんですかと聞くと、ほぼ例外なく無宗教と答える。今まで宗教行事に参加したことはありますか、という問いには、全くないと回答したそうです。初詣に行って、神様に家内安全、無病息災等々を祈るわけですから、宗教行事以外のなにものでもないはずです。その自覚が全くない。日本人の宗教観は実にユニークです、とのことでした。

河合隼雄氏は、著書『「日本人」という病』の中で、アメリカ人の友人と奈良の大仏を見に行った時のことを書いています。日本人の老若男女多数がお参りしている様子を見て、友人が、日本人は宗教的だと感激したのだそうです。彼らは観光に来ているだけではないかと氏が言うと、「こういうところに観光に来ること自体が宗教的だ」とのこと。確かに観光だけが目的なら、他にも行くところはあるはずだし、仏様を拝んだり、賽銭をあげたりしなくてよいはずです。

氏は、そこで、「日本は宗教性というものが現実生活とまざっている」ことが背景にあると考えます。例えば欧州では、日常生活と宗教生活がわかれているので、日曜には休みの店が多いですし、きちんとした服を着て教会にでかける。「聖なる日に聖なる所へ行って、聖なる話を聞く」。日本では、「聖なる世界と日常がものすごく重なっている生活をしている」というのです。