100歳までボケない方法はあるのか 

人生を54年あまり生きてきて、あとどのくらい生きられるのか、ということを考えることもある。別に長生きをしたいというのではない。寝たきりで痴呆というのでは、いくら長く生きてもしようがないとも思える。会社の同僚で、寝たきりの義母を抱える人がいるが、もっと露骨に、人の迷惑になるくらいならさっさと死にたいという。そうなる前に自殺するとまでいう。半分本気のようでもあるので、自殺を考えるくらいなら、痴呆、寝たきりにならないよう、今から努力してはいかがですか、といってみた。


例えば、「100歳までボケない101の方法」という本がある。高齢者でありながら、身体も頭も健康を維持できた人を例にあげつつ、脳の健康をたもつための101の方法を紹介している。最初に出てくるのは、オランダの115歳で亡くなった女性。105歳までは一人で生活していたそうだ。記憶力や注意力の衰えは見られず、死後解剖したところ、脳の萎縮や老人斑がほとんどなかったという。この女性が、痴呆症にならなかったのは、アルツハイマー病にかからなかったからと考えるのは、ちょっと気が早い。


もう一人の驚くべき例は、101歳まで生きた、アメリカの修道女、シスター・マリーである。家庭の事情で、中卒で修道院に入ったあと、通信教育で高卒の資格をとり、19歳から84歳まで教職をつとめる。やめた後もボランティアとして地域の活動にとりくみ、新聞を毎日隅々まで読んで、世界の動きにも常に関心をもっていた。ケンタッキー大学医学部の加齢・認知症研究にも積極的に協力し、認知症のテストでは全く正常、知能テストでも高得点をあげていたという。


ところが、同大学によって死後解剖されたところ、脳は、健常者の7割程度に萎縮し、アルツハイマー病の特徴が多く見られたというのだ。研究者は、シスター・マリーの生き方や生活習慣が、発症を防いでいたのではないかと推測しているそうである。なんだか希望がわいてくる話だ。なんたって、アルツハイマー病になっても大丈夫というのである。


101の方法は、食事、習慣(頭の使い方)、運動と三つのパートに分かれており、どれも脳によさそうである。ただ、たいていの人は、101もとてもやってられないんじゃないか。毎朝オレンジジュースを飲めとかリンゴをまるかじりとか納豆めしをくえ、とか言われても、私には、ちょっと無理。できること、やって気持ちのいいことを、適当に選んでやっていけばいいのだろう。帯には、ひとつからでも効果がありますという。どの程度の効果かは知れたものではないが、やっても害はなさそうだ。効果があると信じていれば、その分気持ちが楽になって、それだけでも立派な「効果」かも知れない。