冷却まであと5年!?

ツイッター情報から、大前研一氏の福島原発事故解説が優れているというので、早速動画を見た。なるほど、事故の直接原因のみならず、制度的背景にも目が行き届いており、非常に説得力がある。原子力エンジニア出身という大前氏の、面目躍如たるものがある。



政府、東電の無能無策ぶりを糾弾しているが、同時に、現状の放射線の状況であれば、30キロの避難範囲は妥当ともいっている。また、原子炉が暴走してしまったチェルノブイリのような状態におちいることもないという。


驚いたのは、燃料棒を移動できる程度まで冷却するのに、あと3〜5年はかかるという点だ。今の今まで、せいぜい数ヶ月か、長くとも1年くらいでかたがつくと、漠然と思っていたのである。しかも、冷却がうまくいったとしての3〜5年である。冷却されるまでは、核燃料は放射線を出し続けるから、建物の修復もままならない。大前氏は、安定的に冷却するための設備を作った上で、原子炉6基全体を、巨大な東京ドームのようなテントで覆えば、放射性物質の拡散を防ぐことができるし、避難区域をもっと狭めることも可能とする。ぜひやってほしいものだ。政府や東電の連中は、長期的な対策を検討しているのだろうか。その節は全くうかがわれないのだが。


原子炉の建物の中に使用済み燃料棒が貯蔵されていたことが、問題をさらに大きくした。それは、持って行き場がなかったためだという。本来ならば、最終処理施設に運ぶまでの10〜50年間(!!)貯蔵しておく中間貯蔵施設に運んでおくべきだったのだが、建設予定地すべての強固な反対にあって、いまだに建設できていないのだそうだ。こういったレベルの話まで、解説してくれた記事を私は知らない。


今回の事故の技術的解説にととまらず、政府の原子力政策の欠陥、危機管理体制の欠如、東電の隠蔽体質、東電内における原子力部門への異端視、といった制度面の問題点、さらには、原子力政策面での国際的な影響も詳しく分析していて、大いに参考になる。また、今後取るべき方策も傾聴に値する。ぜひ一見していただきたい。


ただ、動画最後の、大前氏主催のBBT Universityの宣伝には、やや力が抜けてしまった。国際派ビジネスマンとしてのスキルアップを望まない人は、スキップした方がいいかも。